出遭いを求めて
人生のスパイスは出遭いだ。
出遭いが劇的であればあるほど、人生は豊なものになるような気がする。
それは、なにも人と人に限った話ではない。
かつて秋葉原にヤマギワソフト館という5階建てのお店があったことは、私と同年代で秋葉原に行った事のあるひとなら覚えているだろうと思う。音楽ソフトから映像ソフト、パソコンソフトまで扱っているお店で、上から下までぐるっと巡れば新作チェックが出来てしまう便利なところであった。
そんなヤマギワソフト館のアニメフロアで、流れていた歌が私の心につきささったことがある。
店内を徘徊していた足を止め、意味もなくスピーカーがあるであろう天井をみあげる。
透き通った女性ボーカルと、古風な言い回しの歌詞が印象的であった。
はっと気がつくと、曲は別のものにかわっていて、しかもボーカルもまるっきり替わっていた。さっきの曲はなんですか? と店員さんに訊こうにも、曲の感触しか残っておらず、歌詞の一端も出てこない。視聴機をかたっぱしから試してみるもお目当ての曲がわからない。店内を流れる曲は次々変わるから、何曲前だったのかももうわからない。さらに悪いことに、閉店時間も迫っていた。でも、ここで手放したら二度と曲の感触すら思い出せそうにない――
うつろな視線で店内を見渡しながらも、その時の私は妙に冴えたことを考えたものだった。
「店内でかかっていたのはきっと新曲。おそらくシングル。今期のアニメの主題歌。歌詞に古風な言い回しが多かったので、きっとタイトルは漢字」
2006年当時に一か八かで買ったのがTVアニメ「うたわれるもの」OP主題歌 夢想歌。
わたしの心を捉えたのは、表題曲ではなくカップリングの「星想夜曲」のほうであった。
この小さな奇跡に運命を感じないはずもなく、ボーカルのsuaraはいまや大のお気に入りであったりする。
小説とだって劇的な出会いがある。
もうずいぶん前だが、偶さか入った書店の棚でみかけた六番目の小夜子 (新潮文庫)。
そのとき背筋に走った寒気は、いまでもはっきりと覚えている。
当時はまだ恩田陸はデビュー間もない頃で、わたしはまだその名を知らなかった。
アマゾンやiTunesもいいのだが、出遭いを求めて、ときどきはお店に足を運んでみるのが人生を楽しむこつであろう。
夏乃市

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